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皆さん、こんにちは。Fire Risk Managementの松永浩行です。
最近、消防設備会社の方から「行政から通知が来たので、届出書類の作成を代わりにお願いしたい」というご依頼を続けていただいています。工事や点検はご自分たちの本業ですが、施主名義の書類まで抱えるのは話が別だ、という判断だと受け止めています。
そこで今日は、消防設備会社の皆さんに向けて、どの書類を御社で出せて、どの書類を行政書士に回したほうがよいのかを整理してお伝えします。判断の基準のお話しをしたいと思います。
いちばん大事なところから入ります。消防関係の書類は、「誰が届け出る義務を負っているか」が法律で決まっています。 そしてここが、御社が出せるかどうかの分かれ目になります。
消防法の条文で確認すると、次のとおりです。
| 書類 | 根拠 | 届出・報告の義務者 |
|---|---|---|
| 工事整備対象設備等 着工届 | 消防法17条の14 | 甲種消防設備士(工事に着手しようとする本人) |
| 消防用設備等 設置届+検査 | 消防法17条の3の2 | 関係者(所有者・管理者・占有者) |
| 消防用設備等 点検結果報告 | 消防法17条の3の3 | 関係者 |
| 防火管理者 選任・解任届 | 消防法8条2項 | 管理権原者 |
| 防火対象物 点検結果報告 | 消防法8条の2の2 | 管理権原者 |
| 特例認定の申請 | 消防法8条の2の3 | 管理権原者 |
| 自衛消防組織 設置届 | 消防法8条の2の5第2項 | 管理権原者 |
ここで言う管理権原者とは、社長さんや店長さんなどのことを指します。
この表を見ていただくと、あることに気づかれると思います。
着工届だけが「甲種消防設備士本人」の義務で、それ以外はすべて施主側(関係者・管理権原者)の義務です。
ここが判断の出発点になります。
まず、安心していただける部分をお伝えします。
自社が施工する工事の着工届は、御社の義務です。 消防法17条の14は「甲種消防設備士は…その工事に着手しようとする日の十日前までに…届け出なければならない」と定めています。義務を負っているのは、工事をする甲種消防設備士本人です。
つまり、御社の消防設備士が自社施工分の着工届を作成して提出することは、他人の代わりにやっているのではなく、自分の義務を果たしているということです。委任状も要りませんし、行政書士に回す必要もありません。これまで通りです。
点検についても同じ考え方です。 消防設備士や点検資格者として実際に点検を行い、その結果を点検票に記録する部分は、資格に基づく本来の業務です。ここを外に出す話ではありません。
一方で、実務上よくあるのがこちらです。
設置届の本体。点検結果報告書の本体。防火管理者の選任届。消防計画の届出。防火対象物の使用開始届(こちらは火災予防条例が根拠で、自治体ごとに運用が違います)。
これらは義務者が施主側です。御社が作成しているとすれば、それは「他人の依頼を受けて、その人が出すべき書類を作っている」ことになります。
現場では、施主が様式を書けないので設備会社が引き取る、という形が自然に定着してきました。行政の側にいた人間として、その事情はよく分かります。コンプライアンスの厳しい現代社会、整理するタイミングかもしれません。
では、どこで線を引くか。契約を見れば決まります。 次の3つを順に確認してください。
① その届出の義務者(名義人)は誰か
自社の甲種消防設備士が義務者なら、御社の仕事です。施主(関係者・管理権原者)が義務者なら、御社にとっては「他人の書類」です。上の表で確認できます。
② 御社は、その工事の請負契約の当事者か
自社が請け負って施工した工事に伴う着工届なら、①と合わせて完全に御社の領域です。逆に、他社が施工した案件や、工事を伴わない書類だけの依頼は、請負契約の外にあります。
③ 書類作成の対価が、契約・見積に含まれているか
ここが実務上いちばん効きます。見積書に「書類作成料」という項目がなくても、工事一式、技術支援料、年間保守契約料。その中に施主名義の書類を作る対価が実質的に含まれているなら、対価を得て書類を作成していることになります。
3つの答えを並べると、自動的に整理がつきます。①が自社かつ②が当事者なら御社。①が施主で、③に対価が含まれているなら、行政書士に回す。 これが線引きです。
この話が実際のご相談として増えている背景に、法律の改正があります。
2026年1月1日、改正された行政書士法が施行されました(行政書士法の一部を改正する法律・令和7年法律第65号/令和7年6月13日公布)。第19条第1項に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が加わりました。
正確に、2点だけお伝えします。
ひとつ。「名目」の話であって、「報酬の有無」の話ではありません。 報酬(対価)を得ていることは、変わらず要件として残っています。無報酬の手伝いまで対象にしたものではありません。問題になるのは、対価を受け取りながら名目を別のものにしている場合です。だからこそ、上の③が判断基準になります。
ふたつ。新しく禁止されたものではありません。 総務省が各府省に宛てた通知(総行行第281号)は、この改正を、どのような名目であっても対価を受領して業として官公署提出書類を作成することは違法であるという「現行法の解釈を条文に明示する」ものだと説明しています。以前からそうだったことが条文に書かれた、ということです。「2026年から違法になった」という説明は正確ではありません。
罰則の整備もありました(第21条の2、および法人にも罰金刑が及ぶ両罰規定=第23条の3)。ただ、御社にお伝えしたいのは罰則の話ではありません。行政から通知が届き、施主から書類の対応を求められる場面が増えている以上、分担を決めておいたほうが商売がしやすい、という実務の話です。
ご依頼をいただく場合、次の形でお受けしています。
書類の「鏡」=当方が作成・提出します
「鏡(かがみ)」とは、届出書・申請書の本体、つまり様式そのものを指します。この作成、法令要件のチェック、所轄消防への提出を当方が持ちます。
技術資料=御社にご用意いただきます
図面、設備仕様、点検票、機器の型式。現場を知っている御社でなければ作れないものです。ここは御社に残ります。
そして、契約の相手と委任の相手を分けます。
御社は案件の取次ぎと技術資料のご提供に専念していただき、書類作成は当方が行う。この二層構造にしておけば、誰が何の権限で動いているかが常にはっきりします。
書類を作るところで終わりにしません。窓口対応がいちばん手間だと承知しています。
着工届は、工事に着手しようとする日の10日前までに提出します。原則として完成検査は伴いません。
設置届は、工事完了後に提出して完成検査を受けます。当方は提出の際に、所轄消防と完成検査の日程調整・予約まで行います。補正を求められた場合の対応も当方が持ちます。
完成検査の立会いは、御社の消防設備士にお願いします。 ここは資格と現場知識が必要なところですので、御社に残していただく形です。
工事完了の予定日を早めに共有いただけると、検査枠の確保がスムーズになります。なお、様式・添付書類・検査の予約方法や立会いの要否は所轄消防ごとに運用が違いますので、案件ごとに確認して進めます。
「委任状を毎回もらうのが面倒では」と思われるかもしれません。ここは軽くできます。
消防の届出様式は押印が廃止されており、委任状への押印も原則として不要です(本人の署名で足ります。ただし委任状の添付そのものは必要です)。ですので、次のいずれかで運用できます。
書類の確認までオンラインで完結し、窓口に行くところだけ当方が動くという形にすれば、件数が増えても御社の事務は膨らみません。
分担を整えると、御社側に3つ返ってきます。
ひとつ、技術者が書類事務から外れて、工事と点検に戻れます。 消防設備士の時間を様式の記入と窓口の往復に使うのは、単価の観点から見て割に合いません。人手が足りない現場ほど、ここが効きます。
ふたつ、補正対応と窓口往復が消えます。 提出して補正を求められ、また出しに行く。この往復は御社の粗利をそのまま削ります。当方は書類を審査する側に約30年、5,000件を超える立入検査に携わってきましたので、何で補正になるかを作る前に潰せます。
みっつ、施主への説明が通りやすくなります。 「届出書類は行政書士が作成して提出します」と言えることは、御社の信用の材料になります。施主から「これは誰が作ったのか」と聞かれる場面は、今後増えます。
契約の形は、件数が多く継続してご発注いただける場合は顧問契約(月額)+1件あたり定額、件数が読めないうちは都度受任をおすすめしています。まず数か月を試行期間として、件数と稼働を見ながら調整していく形が現実的です。
私は防災・財務のコンサルタントであると同時に、行政書士です。消防に関わる書類や消防設備、危険物などに係る事案は、届出も許可も含めまとめて引き受けられます。 危険物施設の設置許可申請や変更許可申請、予防規程の認可申請、保安監督者の選任届も同じ枠組みでお受けできます。
「どの書類を回せばいいのか分からない」「まず一件、試しに頼んでみたい」という段階でご相談いただいて構いません。御社の案件を1つ拝見して、①〜③の判断基準に当てて仕分けするところからご一緒します。
お問い合わせはこちらから。案件のご連絡から書類確認までオンラインで完結し、全国対応しています。
※本記事は2026年7月時点の情報にもとづく一般的な情報提供です。消防法および行政書士法の条文、総務省通知の内容は原文で確認していますが、個別の契約や業務実態の評価は事案ごとに異なります。使用開始届・少量危険物の届出など火災予防条例にもとづく手続きは自治体によって様式・要否が異なり、完成検査の予約方法や立会いの要否も所轄消防ごとに運用差があります。具体的な手続きについては所轄消防本部または当方へご確認ください。
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[…] 役割分担の具体的な進め方は「消防の届出書類のお話|設備会社と行政書士の分担」でも書いていますので、あわせてご覧ください。 […]