危険物の「指定数量」、ここで会社は止まる

皆さん、こんにちは。Fire Risk Management(FRM)(ファイヤーリスクマネージメント)の松永浩行です。

いきなりですが、ひとつ質問をさせてください。「御社は今、危険物を指定数量の何倍、持っていますか?」——即答できる会社は、私の経験上、そう多くありません。そして、この“即答できない”状態こそが、ある日ふいに会社を止めかねないリスクの入口なんです。

私は消防の世界で30年、予防査察を5,000件以上やってきました。今日は「指定数量」という、地味に見えて実は経営を左右するテーマの、その“入口”をお話しします。

目次

危険物は「うちは関係ない」会社ほど、足元にある

危険物施設と聞くと、コンビナートのような巨大プラントを思い浮かべる方が多いと思います。ですが、ああいう現場はたいてい専門の部署があり、知識を持った担当者がいて、正直しっかりしています。私が現役時代に「危うい」と感じてきたのは、そこではありません。

もっと身近な会社です。暖房や給湯のために重油の地下タンクを抱えるホテルや旅館、スーパー、デパート。ボイラー施設を持つ工場。塗料や接着剤、シンナーを日常的に扱う塗装業や建設会社。ホームセンターに至っては、灯油や塗料を店頭で普通に売っていて、気づけば店頭の在庫が線を越えている、ということが実際に起こります。

つまり危険物は、「うちは製造業じゃないから関係ない」と思っている会社ほど、足元にある。これが最初の落とし穴です。

こわいのは「知らないうちに越えている」こと

指定数量とは、危険物の品目ごとに「これ以上持つなら許可が要りますよ」と定められた線引きです。やっかいなのは、扱う量も種類も日々動くこと。仕入れや出荷、季節による在庫の増減で、「今いくつか」は常に揺れ動きます。

(具体的な数え方や、線に満たない少量危険物の扱いは、品目や自治体の火災予防条例によって変わります。この“数え方と日々の管理”は奥が深いので、別の回で改めて詳しくお話しします。)

ここでお伝えしたいのは一点だけ。多くの会社が、悪気なく、知らないうちに線を越えているということです。誰かがサボっているのではありません。日々の在庫で動くものを現場任せにしていれば、越えていることに誰も気づかない。それが自然なんです。だからこそ、危ない。

「許可」だからこそ、越えていると重い

なぜ、そこまで気にする必要があるのか。危険物の規制が「許可」で成り立っているからです。

許可とは、行政が「使ってよい」と認めた状態のこと。裏を返せば、その前提が崩れれば、行政は使用の停止といった処分に踏み込みやすい。私の実感として、危険物は行政が処分に踏み切りやすい分野です。「届出」で済むものとは、重みがまったく違います(この「届出」と「許可」の決定的な違いも、別の回で改めてお話しします)。

では、把握できていないと、何を失うのか

ここからが「経営の話」です。

もし危険物が原因で操業が止まれば、行政は安全が確認できるまでラインを動かさせません。その間、1日あたりの利益がまるごと止まる。復旧の費用がかかり、取引先への納入が遅れ、信用に傷がつく。儲かっている会社ほど、止まった1日の損は大きくなります。

金額は業種や規模でまったく変わるので断定はしませんが、一度「1日止まったら、利益・人件費・復旧・取引先への影響で、いくら失うか」を試算してみてください。多くの経営者が、その額に驚かれます。指定数量の把握という地味な作業が、実はその損失を防ぐための“投資”だと見えてくるはずです。

まずは「今の状態」を一枚に

だから私は、「危ないから直しましょう」では終わらせません。それは行政の目線です。

やるべき最初の一歩は、自社の危険物が「今、指定数量に対してどういう状態か」を棚卸しすること。ここがはっきりすれば、次に何をすべきかは自然に見えてきます。

Fire Risk Management(FRM)(ファイヤーリスクマネージメント)は、かつて査察する側にいた視点で、御社の危険物が今どういう状態にあるのかを一枚に整理するところからお手伝いしています。在庫で動くからこそ、外から冷静に棚卸しする価値があります。

シェアをよろしくお願いします。
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次