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皆さん、こんにちは。Fire Risk Managementの松永浩行です。
査察で工場をまわっていた30年、いちばん多く聞いた言葉があります。「必要なのは分かっているんですけどね」。自家発電も、危険物置き場の見直しも、耐震の補強も——やった方がいいのは、経営者も分かっている。でも後回しになる。理由はいつも同じで、「今すぐ金がかかるが、明日すぐ儲かるわけではないから」です。
防災が後回しになるのは、危機感が足りないからではありません。「コスト」にしか見えていないからです。今日はこの見え方を変える話をします。防災は、やり方しだいで「投資(かけた金が返ってくるもの)」になります。
考え方の順番はこうです。防災を「いくらかかるか」で見る前に、「やらなかったら、いくら失うか」を先に置く。
たとえば、災害や火災で工場が10日止まったとします。その間の売上はゼロ、でも人件費や固定費は出ていく。取引先への納品も止まり、最悪、供給責任を問われて取引そのものを失うこともあります。操業停止1日あたりの損失に停止日数を掛けるだけで、金額は数百万〜数千万円の単位になることが珍しくありません。(あくまで業種・規模による試算です。実際の数字は自社で確認してください)
この「失う額」と「対策にかかる額」を並べて初めて、防災は経営判断になります。多くの場合、対策費より、止まったときの損の方がずっと大きい。ここが出発点です。
とはいえ、設備投資はまとまった金額です。そこで使うのが、国の補助金・税制。防災投資を軽くする仕組みが、実はいくつも用意されています。その入口になるのが、「事業継続力強化計画」の認定です。
事業継続力強化計画とは、災害に備える取り組みをまとめた計画を、経済産業大臣(経済産業局)が認定する制度です。認定を受けると、次の3つが同時に効いてきます(2026年7月時点)。
認定計画にもとづいて一定の防災・減災設備を導入すると、取得価額の16%を、通常の減価償却とは別枠で上乗せして経費計上できます(特別償却)。対象には、自家発電設備、浄水装置、揚水・排水ポンプ、耐震・制震・免震装置などが含まれます。
ただし金額の下限があります。 機械装置は100万円以上、建物附属設備は60万円以上が要件です。小さな備品を揃えるだけでは対象になりません。
黒字の年であれば、その年の課税所得を圧縮できる——つまり税金の面で、投資の一部が返ってくるイメージです。
期限の立て方は、少し注意が要ります。令和9年(2027年)3月31日までに計画の認定を受け、その認定を受けた日から1年以内に、対象設備を取得して事業に使い始める——この2段構えです。「令和9年3月末までに設備を入れればよい」ではありません。認定が先で、そこから1年の持ち時間、という順番になります(現行制度。期限や率は改正されることがあります)。<br>※具体的な税額への効果は個社の状況で変わります。適用の可否・計算は税理士にご確認ください。
設備投資に使えるものづくり補助金などでは、事業継続力強化計画の認定が審査の加点になります。採択の競争で、認定を持っていることが有利に働きます。<br>※補助金は公募回ごとに金額・補助率・要件・締切が変わり、加点の扱いも回によって変わります。申請時は必ず最新の公募要領をご確認ください。
認定を受けると、日本政策金融公庫の設備資金について基準利率から0.9%引き下げの融資が受けられます(運転資金は基準利率のままです)。信用保証も、通常の普通保険等とは別枠で追加の保証枠が確保できます。投資の資金繰りそのものが軽くなるわけです。
ここで大事なことを、正直に申し上げます。事業継続力強化計画は、ひな形に流し込めば「認定」自体は取れてしまいます。でも、中身が伴わない計画は、いざというとき会社を守りません。分厚いだけの飾りになります。
私は査察で5,000件を超える現場を見てきました。事故がどこで、どう起きるか。危険物がどこに置かれていると危ないか。停電したとき、その工場で何が最初に止まるか——これは、書類だけを見てきた人には書けない部分です。その現場の実態にもとづいて計画を組むから、認定にも実が伴い、税制や補助金の効果も本物になる。ここがFRMの仕事の核心です。
防災は、「危ないから直す」で終わらせるものではありません。止まったときの損失リスクを数字にし、補助金・税制でその投資を軽くし、投資として判断する。事業継続力強化計画は、そのための現実的な入口です。
認定申請は、経済産業局への行政手続き——行政書士の専門分野です。FRMは、計画の中身づくりから認定申請までを一貫してお手伝いできます。
「うちの工場だと、どの設備が対象になるのか」「そもそも計画から作れるのか」——その段階のご相談で構いません。全国オンラインで対応しています。まずは、自社の「止まったときの損」と「使える制度」を、一緒に整理するところから始めましょう。
※本記事は2026年7月時点の一般的な情報です。制度の要件・数値・期限は改正されることがあります。個別の税務判断は信頼のできる税理士のご紹介も賜ります。
コメント
コメント一覧 (2件)
[…] […]
[…] BCPと親和性の高い制度に、国の「事業継続力強化計画」の認定があります。認定を受けると、防災・減災設備の税制優遇や、補助金審査での加点、低利融資といった後押しが受けられる場合があります。「罰則を避けるための出費」ではなく、「戻ってくる投資」に変わるわけです。ただし制度の要件・対象・期限は改正で動きます。数字は本記事では断定せず、最新の内容は必ず確認してください。制度の使い方は、こちらの記事(工場の防災投資を事業継続力強化計画で軽くする方法)で詳しく解説しています。 […]